レントゲンの被ばく、正直に話します|「何回も撮って大丈夫?」に現場技師が答える

 

◎ レントゲンの被ばく、正直に話します|「何回も撮って大丈夫?」に現場技師が答える

「また検査ですか……被ばくが心配で」 ……現場でよく聞かれる言葉です。

正直に言います。被ばくはゼロではありません。ただ、「怖い」と感じている量と、実際の量の間には、大きなギャップがあります。そのギャップを埋めることが、この記事の目的です。


1. そもそも「被ばく」とは何か

被ばくと聞くと、原発事故や核兵器を連想する方もいるかもしれません。しかし医療の現場で言う被ばくは、X線という放射線を体に当てること、それだけです。

そしてここが重要なのですが、私たちは日常生活でも常に放射線を浴びています。宇宙から降り注ぐ放射線、大地から出る放射線、食べ物に含まれる放射性物質——これを「自然放射線」と言い、日本では年間約2.1ミリシーベルト程度とされています。

医療被ばくはこの自然放射線と同じ土俵で比較できます。

被ばくは「医療だけの特別なリスク」ではなく、日常の延長線上にあります。


2. 検査別の被ばく量、実際のところ

各検査の被ばく量を、自然放射線と比較してみます。ただし、ここで示す数値は「実効線量」といって、実際に測定した値ではなく、部位ごとの放射線感受性を加味して計算した推定値です。あくまで目安として見てください。

  • 胸部レントゲン1枚:約0.06ミリシーベルト → 自然放射線の約10日分
  • 胃のバリウム検査:約3ミリシーベルト → 自然放射線の約1.5年分
  • 胸部CT:約7ミリシーベルト → 自然放射線の約3年分
  • 腹部CT:約8ミリシーベルト → 自然放射線の約4年分

胸部レントゲン1枚は、自然放射線の10日分に過ぎません。「何枚も撮って大丈夫ですか」という質問をよく受けますが、胸部レントゲンを10枚撮っても、自然放射線の3ヶ月分です。

CTになると線量は上がります。ただし、CTが必要と判断されている場面では、撮らないことのリスクの方が大きい。被ばくのリスクと、病気を見逃すリスク。その両方を天秤にかけた上で、検査は行われています。




3. 「何回も撮って大丈夫か」への正直な答え

残酷な現実を言います。回数が増えれば、被ばく量は積み重なります。

ただし、現在の医学的な考え方では、通常の医療行為で受ける被ばく量が、がんのリスクを有意に高めるという明確な証拠はありません。年間100ミリシーベルト以下の被ばくは、リスクの増加が統計的に検出できないレベルとされています。通常の検査を何度受けても、この水準を超えることはまずありません。

現場にいる私自身、「被ばくが怖いから検査を断る」という患者さんを見たことがありません。多くの方は、説明を聞けば納得して検査を受けてくださいます。

「被ばくが心配」という気持ちは正常です。ただ、その心配で必要な検査を遠ざけることの方が、体にとってリスクになることがあります。


4. 不安なときはどうすればいいか

「何ミリシーベルトですか?」と検査前に聞きたくなる気持ちはわかります。ただ正直に言うと、技師が答えられるのは目安の数値だけです。被ばく量は部位や体格、撮影条件によって変わりますし、そもそもシーベルトという単位自体、実測値ではなく計算上の推定値です。

それより有効なのは、検査室に来る前に、主治医に「この検査は本当に必要ですか?」と聞いておくことです。検査室に来てから「やっぱり被ばくが心配で……」となると、後ろに待っている患者さんもいますし、技師も医師でもないので「必要かどうか」の判断はできません。

不安は検査室の外で解消しておく。それが、あなたにとっても現場にとっても、一番スムーズな流れです。


……なんて偉そうに書きましたが、「大丈夫ですか」と聞かれるたびに、もっとわかりやすい説明ができないかと考え続けている、冴えない技師の独り言です(笑)。 明日もまた、数字よりも先に、患者さんの不安に向き合うところから始めます。

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