2015年5月14日木曜日

放射線技師1年生(肺レントゲン修行)


 今年は入ってきました新人放射線技師。小川君。ぴっかぴかです。

新人放射線技師の最初の配属場所は、おそらく9割の病院で胸部レントゲン撮影室でしょう。

ここで、「息をすって~、止めてください」「楽にしてください」を1日中言い続けるという訓練が始まります。

胸部レントゲン撮影は画像の読み方もさることながら、その撮影法に関しても実は奥深いものがあります。そのうんちくと技術を叩き込まれるのです。

部屋は大抵広めの部屋になっています。これには理由がありますが、説明すると長いのでまたどこかで説明したいと思います。

部屋が大きいので、大きな声を出さなくてはいけません。

オートボイスといって、レントゲンの準備ボタンを押すと自動的に

「息を吸って、止めてください」とアナウンスしてくれる装置がありますが、

これは技師を3年以上やらないと使ってわいけません!??

そして、患者さんのポーズをきめる(ポジショニングという)のも覚えなければなりません。

胸部レントゲン時のポーズの決め方については、以前このブログで紹介していますが、肩甲骨が肺と重ならないようにポジショニングするというテクニックを習得します。

しかし、なにより重要なのがフイルムの中に胸部(肺)がしっかりと入るように患者さんの位置を決めることです。これが、新人技師の最初の難問でしょう。

よくやる失敗が、胸部の上が切れちゃったという写真。

これはフイルムを配置する位置が、下すぎたときにおこります。
また、時々患者さんが息を吸っての合図とともになぜか爪先立ちしてしまうことがあって、きれてしまうことでもおこりますね。





次に多いのが、肺の下が欠けるという失敗。

これは、高身長のやせ形患者さんでよくある失敗で、このタイプの方は肺が長いのです。それで切れてしまうというもの。
また、直前の撮影で肺上部が切れてしまったという失敗をした後に、肺上部を気にするあまり下が欠けてしまうという失敗例でもあります。



このような失敗を経験しながら、みんな立派な放射線技師へと成長していきます。

頑張れ!小川ちゃん!!

2015年5月13日水曜日

わたし、がんですか?

先生、私は肺がんですか?
 

レントゲン撮影を終えた患者さんによく聞かれることがあるのが、この「私は肺がんですか?」というもの。

私、医者じゃないので・・と思うのですが、基本的にはレントゲンだけで肺がんの診断はされません。

というのも、レントゲンではよくわからないからです。

進行が進んだ肺がんなどでは明らかに肺のなかに大きな塊が写りますし、胸水がたまっていたりなどもあるので肺がんですねと断定されてしまうこともあるかもしれませんが、

基本的には症状、血液検査、たんの検査などをみて、最終的にはがんが疑われる塊から、針などでその組織を採ってきて顕微鏡で観察してようやくがんであると診断されます。

この画像は、ネットからとってきた肺炎と肺がんの画像です。どっちも同じようにみえますよね。
このように肺炎と肺がんの画像はにているので、なかなか診断は難しいです。



また、初期の小さい肺癌もレントゲンでは厳しいので、今はCTで肺がん検診するパターンもあるようです。

ということで、テレドラマのようにイケメン俳優がレントゲン写真を見た瞬間に

「これは、肺がんです」

とはならないのです。



2015年5月11日月曜日

放射線技師の仕事 ここ10年で大変化!!

この十年数年ほどで画像診断部のしごとって大きく変わりました。

一番のポイントはレントゲン撮影がデジタルレントゲンになり、フィルムがなくなってしまったことでしょう。
フィルムメーカーにお勤めの方々は大変だったのではないでしょうか。

バブル最後のころでもフィルムメーカーが大変元気で、セミナーなどを開催してくれてそのお土産としてワインをいただいてきたりしたこともあったそうです。

しかし、フィルムの時代の仕事はたいへんでした。

昔のフィルムカメラをご存知の方は理解できるかと思いますが、フィルムは光にあたると感光といって黒く黒化してしまいます。

ですから、フィルム交換の時は感光しないようにするためにフィルムを巻き込むという機構がそなわっていて、交換時は必ず巻き取ってから交換しないと最後の数枚が真っ黒になってしまったなんて経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか? 

この巻き取りがうまくいかないことも結構昔のカメラではよく起こったものですが、そんなこともデジカメになってからは心配ご無用ですね。すべてはフィルムがいけなかったのです。


同様にしてデジタルレントゲンも光からの感光を気にしなくてよくなりました。


従来のレントゲン写真作成工程は、以下の流れになっていました。

ステップ1(撮影)

1.レントゲンが体を透過する

2.透過したレントゲンは、増感紙という紙に当たると光に変換される

3.光がフィルムを感光する

というのが、今も変わらないレントゲン撮影の基本的な流れです。レントゲンがいっぱい当たるところは、いっぱい光るので、いっぱい感光させるので黒く写ります。
よく見る胸のレントゲン撮影ですと、肺は空気が90%なのでレントゲンは吸収されずに透過されて、レントゲン写真上黒く写っています。

さてここからがデジタル化で圧倒的に作業が楽になった部分です。

ステップ2(現像)

1.レントゲンフィルムが入ったカセッテという板を暗室に持っていきます。
暗室では赤い光だけが点いていて、その中でフィルムを現像する作業をします。

2.レントゲンフィルムの入ったカセッテというケースからレントゲンフィルムを取り出します。

3.現像液という液体につけます。

4.定着液という液体につけます。

5.その後、水洗といって、無駄についた定着液を水で洗います。

6.最後に乾燥してよくみるレントゲン写真が完成します。


私が新人の時にはすでに自動現像機という装置があったので暗室にカセッテを持っていき、フィルムを取り出して自動現像機(技師用語で「自現機(じげんき)」とよぶ)に挿入すると、フィルムが出てくるという方式でした。


自現機は暗室の外に排出口があるのでそこからフィルムが出てくるという、なんともピタゴラスイッチのような機構でした。

このような暗室作業が完全になくなったのがデジタルレントゲンということです。
なんともすごいのです。


ということで、デジタルレントゲンの工程をみてみましょう。


ステップ1撮影はいっしょ。


ステップ2現像

1.カセッテを読み取り装置という機会にはめ込みます。
読み取り装置の中では、カセッテの中に入れてあるフィルムの代わりの板(イメージングプレート)というのが機械の中で取り出されます。
このIPに特殊な光を当てると、レントゲンの感光量にあった量の光信号が発生し、それを電気信号に変換します。

2.電気信号になった画像データが、PCに送られそこで先生が画像をみます。

以上2工程です。暗室がなくなってしまいました。

昔は現像液などで水まみれになり、おまけにこの現像液や定着液というのが特殊な液体で、酢酸を使っていたので酸っぱいにおいがして大変でした。
においも大変でしたが、白衣に付着すると黒く色がのこってしまうのもやっかいで、白衣もよく汚れていましたね。

レントゲンのやつらは汚いとよく言われたもんです。

あのころは、その匂いを消すためにみんな煙草を吸ってましたっけね~!?


今の新人技師は、酢酸臭くなくて白衣も汚れていない。
さらにイケメンだったりするので、ほんとにうらやましい限りです。

でも、あのアナログな作業は楽しいものでもあったかなあ~と今は思いますが。