造影剤漏出、漏れるときは漏れる|ベテラン技師が考える「できる技師」の条件

 

◎ 造影剤漏出、漏れるときは漏れる|ベテラン技師が考える「できる技師」の条件

「漏れちゃいました」 ……造影剤が漏出したとき、若い技師がよく口にする言葉です。

血管確保をしたのは医師や看護師。だから漏出は「確保した人の問題」——そう捉えてしまう気持ちはわかります。でも、長年この仕事をやってきた立場から、一つだけ言わせてください。

漏出を他人事にしないでほしい。

漏れるときは漏れます。ゼロにはできません。でも、技師の判断で未然に防げる場面は確実にあります。




1. 漏れやすい患者は、最初からわかる

経験を積むとわかってきます。血管が取りにくい患者さんは、漏出する確率が高い。

理由は単純です。血管が取りにくいということは——

  • 何回か刺し直しているので、針がきちんと入っていない可能性がある
  • 血管自体が脆弱である可能性が高い
  • すでに周辺を何度も探られて、血管に傷がついている可能性がある

これらが重なれば、高速注入に血管が耐えられず漏れます。「ルート確保が大変だった」という情報は、漏出リスクのサインです。確保したのが自分でなくても、その情報を拾って次の判断に活かすのが技師の仕事です。


2. 漏れたら、まず止める

漏出が起きたら、すぐに注入を止めます。これが鉄則です。

そして医師に見てもらう。挙上や冷湿布などの初動対応をしつつ、量と造影剤の種類を記録します。早く気づいて止めれば、大事には至りません。逆に気づくのが遅れると、腫れが進行して切開が必要になるケースもあります。

ただ、ここで終わってはいけません。本当に大事なのは「漏れる前」の話です。


3. 未然に防ぐ——撮影方法を組み替える

漏出すると検査が止まります。患者さんにも負担がかかる。だからこそ、漏れそうな状況では撮影方法そのものを組み替えてほしい。

ルート確保が大変だった患者さんには、こんな選択肢があります。

  • 高速注入をしない:注入速度を落として血管への負担を減らす
  • 造影後の画像だけで終わらせる:医師と相談し、ダイナミックを諦めて造影後相のみで判断する
  • ポートがあればポートから造影する:すでにポートが入っている患者さんなら、そちらを活用する
  • 低電圧撮影法を使う:管電圧を下げるとCT値が上がるため、少ない造影剤量・遅い注入速度でも十分なコントラストが得られる

「漏れそうだな」と思った時点で手を打つ。これができると、無理な高速注入による漏出を避けられます。

漏出を防ぐ最大の技術は、針を上手に刺すことではなく、「漏れそうな状況で無理をしない判断」です。


4. 「できる技師」とは何か

私が考える「できる技師」は、画像を細かく読める技師ではありません。

その検査がどこまでの画像を必要としているかを理解していて、状況に応じて妥協点を見出して提案できる技師です。

「この患者さんは血管が弱いから、ダイナミックは諦めて造影後相だけにしましょう」「低電圧で撮ればこの注入速度でも診断できる画像になります」——こうした提案ができる技師は、漏出を防ぎながら、必要な情報を確保できます。

完璧な画像を撮ることがゴールではありません。その検査の目的を理解して、リスクを避けながら必要十分な画像を提供する。それが現場で本当に頼られる技師だと思っています。

念のため言っておくと、読影の勉強を否定しているわけではありません。読める技師は素晴らしい。ただ、それが「できる技師」の唯一の条件ではない、というだけの話です。


……「画像なんて細かく読めなくていい」なんて普段は言っていますが、何が必要かを見極める目だけは大事にしてきた、冴えないおやじ技師の独り言です(笑)。 明日もまた、取りにくい血管を見ながら、妥協点を探します。

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