胸のレントゲン、あの一枚は他とは違う|肋骨をわざと薄く写している話

◎ 胸のレントゲン、あの一枚は他とは違う|肋骨をわざと薄く写している話

「胸のレントゲンなんて、毎年撮ってるただの写真でしょう」 ……そう思っている方に、少しだけ教えたいことがあります。

あの一枚は、手や腰のレントゲンとはちょっと違う撮り方をしています。




1. レントゲンは、部位ごとに設定を変えている

レントゲンは、どこを撮っても同じ、というものではありません。撮る場所によって、X線の性質を変えています。

薄い部分を撮るときは、弱いX線で十分です。手のレントゲンがこれにあたります。逆に、体の中で一番厚みのある腰を横から撮るときは、強いX線が必要になります。厚みを通り抜けるだけの力が要るからです。

厚いほど強く、薄いほど弱く。ここまでは素直な話です。


2. ところが、胸は例外

では胸はどうか。胸は腰ほど厚くありません。なのに、レントゲンの中で最も強いX線を使います。

腰を撮るときよりも、さらに強い。体の厚みで言えば腰の方が上なのに、なぜ胸の方が強いのか。

ここに、胸部レントゲンの仕掛けがあります。


3. 肋骨を、わざと薄く写している

理由は、肋骨です。

肺は、肋骨にぐるりと囲まれています。肺の状態を見たいのに、手前に骨が並んでいる。この骨が、肺を見る上で邪魔になります。

ここで使われるのが、X線の性質です。X線は強くすればするほど、骨に写りにくくなるという特徴があります。だから、あえて強いX線を使って、肋骨をわざと薄く写しているのです。

骨をしっかり写すためではなく、骨を消すために強くしている。他の部位とは、目的が逆なのです。

胸のレントゲンは、厚みを通すためではなく、肋骨を薄くするために強いX線を使っています。


4. 強いX線には、もう一つのおまけがある

強いX線を使うことには、実はもう一つ利点があります。短い時間で撮影できるということです。

強いX線は透過力が高いため、瞬間的な照射でも十分な画像が撮れます。これが何を意味するかというと、心臓の動きさえも止められるということです。胸の中では心臓が動き続けていますが、シャッタースピードが速ければ、その動きに影響されずに写せます。


5. 息が止められない人でも、撮れる

これは、息を長く止められない方にとっても助かる話です。

普通、胸のレントゲンは「大きく息を吸って、止めてください」とお願いします。ただ、高齢の方や体調の優れない方の中には、それが難しい場合もあります。

そんなときも、撮影のタイミングを見計らえば、短い時間で写し取れます。呼吸の状態を見ながらシャッターを切ることで、ぶれの少ない画像が撮れるのです。


6. あの一枚には、工夫が仕込まれている

健診で毎年撮る、あの胸のレントゲン。ただシャッターを切っているだけに見えるかもしれませんが、肺を見やすくするための設定と、動きに強い工夫が仕込まれています。

「胸のレントゲンなんて」と思われがちですが、あれはあれで、考え抜かれた一枚なのです。


……なんて偉そうに書きましたが、実はどこの病院も、最初からこの設定になっているんですけどね(笑)。 明日もまた、先人が考えた設定に助けられながら、検査室に向き合います。

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