腰のレントゲンは、胸の何倍?|撮る場所で被ばくが違う理由
◎ 腰のレントゲンは、胸の何倍?|撮る場所で被ばくが違う理由
「被ばくって、撮る場所で違うんですね」 ……腰のレントゲンを撮ったときに、患者さんから聞かれた言葉です。
いろいろな部位の値が並んだ表をお見せしたら、腰のところだけ数字が大きいことに気づかれたようでした。同じレントゲンなのに、なぜ違うのか。そして、その違いをどう受け止めればいいのか。今日はその話をします。
1. 表を並べると、確かに違う
レントゲン1回あたりの被ばくの目安は、だいたいこのくらいです。
- 頭:約0.02ミリシーベルト
- 胸:0.02〜0.3ミリシーベルト
- お腹:0.2〜1ミリシーベルト
- 腰の骨:0.2〜1.5ミリシーベルト
- 手足:ごくわずか(0.001ミリシーベルト未満)
これは少し前の測定をまとめた国際的な目安で、今の装置ではもっと低いことが多いです。幅があるのは、体格や撮り方、装置によって変わるからです。
それでも並べてみると、腰やお腹は、胸や頭よりひと桁ほど多いことが分かります。
2. なぜ撮る場所で違うのか
① 体の厚みが違う
レントゲンの光は、体を通り抜けるうちに少しずつ弱まっていきます。お腹から背中までの厚みがある腰は、たくさん出さないと向こう側まで届きません。手足のように細いところは、少しで足ります。
② 中身が違う
胸の中はほとんどが肺で、肺の中身は空気です。空気は光を通しやすいので、少ない量でもきれいに写ります。胸のレントゲンがあの少なさで撮れるのは、このためです。胸の撮り方の工夫は、以前の記事「胸のレントゲン、あの一枚は他とは違う」で書きました。
一方、腰やお腹は、骨と筋肉と内臓がぎっしり詰まっています。通り抜けにくい分、量が要ります。
③ 近くにある臓器が違う
手足は、放射線の影響を受けやすい臓器から離れています。だから同じように撮っても、体全体として受ける影響はごくわずかです。お腹や腰は、その大事な臓器のすぐそばを撮ることになります。
3. それでも、CTと比べれば圧倒的に少ない
腰の数字を見て心配そうにされていた患者さんに、私はこう説明しました。「CTと比べたら、圧倒的に少ないですよ」。
CTは、胸で2〜12ミリシーベルト、骨盤で6〜16ミリシーベルトほどです。腰のレントゲンの、何倍から何十倍にもなります。
もう一つの物差しもあります。私たちは普通に暮らしているだけで、宇宙や大地、食べ物などから、日本の平均で年に約2.1ミリシーベルトの放射線を受けています。腰のレントゲン1回は、その1年分よりも少ない量です。
そう説明すると、その患者さんも納得した顔をされていました。
被ばくの量は、撮る場所の「厚さ」と「中身」で変わる。それでも、CTと比べれば桁が違う。
4. 気をつけているのは、妊娠の可能性
それでも私たちが撮る前に気をつけていることがあります。妊娠の可能性です。
お腹や骨盤、腰を撮るときは、おなかの赤ちゃんのすぐ近くを撮ることになります。だから撮影の前に、妊娠の可能性がないかを確認します。何度も聞かれて面倒に感じるかもしれませんが、大事な確認なので、可能性が少しでもあれば先に教えてください。
……なんて偉そうに書きましたが、気になったら遠慮なく聞いてください。表ならいつでもお見せします(笑)。 明日もまた、「それ、どのくらいなんですか」に答えながら、撮影室に立ちます。



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